一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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花の散り方

質問者:   会社員   Peony
登録番号4334   登録日:2019-01-14
花によって、木蓮のように枯れるまでそのまま木についたままの種もあれば、桜のように花びらを1枚ずつ落としていく種、牡丹のように花毎落とす種があります。

後に残った花に養分を残す為には、早めに散った方が良いように思えますがこれらの違いは、何か意味があるのでしょうか?

又、散り方を見分ける分類などあるでしょうか?
Peony様

 みんなのひろば植物Q&Aのコーナーをご利用いただきありがとうございます。

 落葉するときには、葉柄の基部に離層と呼ばれる細胞層が生じます。離層では、細胞間を接着している物質を分解する酵素によって細胞間物質が分解され、それによって細胞間が引き離され脱落します。また、離層の形成はエチレンによって促進され、オーキシンによって抑えられることがわかっています。花弁や花が植物体から脱離する場合も同様なことがおこります。質問では、花弁と花全体の散り方を問題にされていますが、この二者は少し意味合いが異なるように思われます。花全体が脱落する場合は、受粉・受精が不調に終わった時によくおこります。花の離層の形成を抑制するオーキシンは受精の結果成育してくる胚珠に由来しますが、受粉・受精が不調に終わった時には胚珠が成育しないためオーキシンによる離層形成の抑制が機能しないこ
とによると説明されます。 

 牡丹の苗木生産はシャクヤクの台木に接ぎ木しますが、この方法が確立するまでは種子から育てたとのことです。また、牡丹の花弁が一枚ずつ落下していくという記載もあります。質問では牡丹を花ごと落ちる種とされていますが、花ごと落ちると種子はできませんので、そのような分類には無理があるように思います。もちろん品種によっては、雄蕊や雌蕊が弁かして種子を作れず、花ごと落ちるものもあるとは思います。

 虫媒花の花弁は花粉を媒介する昆虫などを誘引する働きをもつことが知られています。花弁を維持するにはコストがかかりますから、受粉が終わった花、訪花時期や訪花時間を過ぎた花では、花弁を切り離した方が植物体にとっては望ましいと思われます。桜の花は散る時には、通常花弁が離脱しますが、年によっては花ごと落ちる花が増えることもあるようです(植物Q&A 登録番号1950「桜の花の散り方」)。落花のしくみについても考察がありますが、おおよそ上記の説明のように胚珠・子房の発育不調によると考えられています。落花を積極的に行う植物の場合の考察もありますので、ごらんになさって下さい。

 枯れるまで花弁が残っている点に注目されているのは落花を考える上で新しい視点だと思います。花弁が枯れるまで残る利点についての議論は知りませんが、枯れた葉が植物体から離れないで残る現象については、本コーナーでもたびたび取り上げられています(登録番号0205, 0326, 0526, 2622,4309)。参考になると思いますので、ぜひご覧になって下さい。


庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-01-28
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