一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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セルロース微繊維について

質問者:   高校生   KN
登録番号0470   登録日:2006-01-19
市民講座の「茎はなぜ細長いか」では、セルロース微繊維のはたらきが重要であることがわかり、興味を持ちました。

そこで、逆の視点として「植物の茎におけるセルロース微繊維の構造と機能」について教えて頂けないでしょうか?
KNさま

 みんなの広場へのご質問有難うございました。また、本学会主催の市民講座「茎は何故細長いか」に御参加下さり、これも有難うございました。講座の講師の柴岡がご質問にお答えいたします。
 植物の細胞は細胞壁というもので囲まれています。セルロースはこの細胞壁の重要な成分です。細胞壁はセルロースの他にヘミセルロースやペクチンを成分としていますが、これらは全て糖が多数つながって出来た多糖と呼ばれているものです。細胞壁はこのような多糖の他に少しですがタンパク質も含んでいます。セルロースはグルコース(ブドー糖)が直線的に並んでつながって出来ていますが、自然界にはセルロースは一本(一分子)で存在することはなく、多数のセルロースが平行に並び束になり、電子顕微鏡で観察することが出来るくらいの太さのセルロース微繊維というものを形成しています。セルロ-ス微繊維を形成しているセルロ-ス分子の数は、細胞によって異なっており、若くてまだ伸長をしている細胞の細胞壁では 2,000〜6,000 分子、伸長を終えた細胞では 10,000 分子以上です。市民講座でも喋りましたが、細胞壁中のセルロース微繊維は同じ方向に並んでいることが多いのですが、非常に丈夫なので、細胞はセルロ-ス微繊維の並んでいる方向と同じ方向には伸びられず、セルロ-ス微繊維の並んでいる方向と直角な方向に伸びます。一般的に茎の細胞では、セルロース微繊維は茎の軸と直角方向に並んでおり、茎の細胞が太るのを防ぎ、軸方向に伸びることを助けています。というように、若い伸長中の細胞では、セルロース微繊維は細胞の伸長方向の制御に重要な役割を果たしています。伸長中の細胞の細胞壁のセルロ-ス含量は20〜40 %ですが、伸長を終えた細胞では 50〜60 %と高くなり、伸長を終えた細胞の細胞壁を丈夫にすることに働いています。茎の下の部分が上部の茎や葉をしっかりと支えていられるのは、下の部分の細胞の細胞壁がセルロースで丈夫にされているからです。樹高が 100 メ-トルを越す樹木がありますが、樹木の材の主成分はセルロースです。樹木が堂々と聳えておられるのもセルロースのお蔭です。

 柴岡 弘郎(JSPPサイエンスアドバイザー)
 
回答日:2006-01-24
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