一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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樹種特性

質問者:   大学生   ズッキー
登録番号4743   登録日:2020-05-29
森林を更新していく過程で、先駆樹種とギャップ種の違いが分からなかったので教えていただきたいです。
両種とも攪乱などによってできた比較的光環境の良い場所に発生すると思うのですが、先駆樹種とギャップ種との明確な違いについて疑問に思いました。

現時点で私が把握していることについて、
ギャップ種とは:成立した林分内で倒木や枝折れなどの際にできたギャップ環境下に発生する種で光環境の改善とともに成長をしていく樹種。

先駆樹種とは:土砂崩れや斜面崩壊によって起きた裸地に発生する樹種。カラスザンショウやフサザクラ、ヌルデなどの光要求度の高い樹種が当てはまると聞きました。

先駆種は遷移の初期段階で発生し、ギャップ種は遷移途中に起きるギャップ環境下に発生する。
以上が現時点で理解していることになります。

どちらも光環境が改善された土地に生育する樹種であることは同じであると思うのですが、
双方の違いはどのような点なのでしょうか?
例えば、火山噴火よって大規模な攪乱が起きそこにギャップ種が侵入してきたら先駆樹種になるのでしょうか?
また、林内の比較的小さいギャップ環境下に先駆樹種が侵入した場合はギャップ種になるのですか?
明確な違いがあれば教えていただきたいです。

お忙しいところ申し訳ありませんが、ご回答のほど宜しくお願い致します。
ズッキーさん

このQ/Aコーナーをご利用くださりありがとうございます。ご質問には森林総合研究所の田中博士から下記の回答文を頂戴しました。参考になさってください。

【田中博士からの回答】
先駆樹種とギャップ種の違いについてのご質問ですね。かなり理解されているようですので、簡単に説明させていただきます。

樹種で明確に両者を区分することはできませんが、状況に応じて2つの用語を使い分けていることが多いです。先駆樹種は遷移過程の初期の明るい環境に定着する樹種を一般的に指します。大規模な山火事や土砂崩れ跡などに定着するアカマツ、ネムノキ、シラカバ、ヌルデやアカメガシワなどが代表的な先駆樹種になります。一方、遷移が進んだ森林内でも、倒木や大枝の落下によって林冠ギャップが発生します。小規模なギャップでは、ギャップ形成前から生存している耐陰性の高いブナやイタヤカエデなどの遷移後期種の稚樹が成長し、ギャップを修復していきます。しかし、大規模な林冠ギャップでは林床がかなり明るくなり、新規に種子散布されたり、埋土種子などで休眠したりしていた光要求度の高い先駆樹種の種子が発芽、陽光を利用して急速に成長し、ギャップを埋めていきます。このような状況で主に定着・更新する先駆樹種のことをギャップ樹種(ギャップ依存種とも)と呼ぶ場合が多いです。ヤマウルシ、ミズメ、カラスザンショウやホウノキなどが代表的なギャップ樹種にあたります。ギャップ樹種の中には、前述の土砂崩れ跡など遷移初期段階にあらわれる先駆樹種も含まれますが、ミズメのように全天環境では成長が低下する樹種も知られています。これらの樹種は、林冠ギャップのようなやや被陰のある環境をより好むと考えられます。このように、ギャップ樹種に区分されていても、樹種によって成長などに最適な光強度にはばらつきがあります。



田中 憲蔵(森林総合研究所森林生態研究領域物質生産研究室)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2020-06-05
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