一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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子葉と本葉について

質問者:   その他   斉藤
登録番号4750   登録日:2020-06-04
こんにちは。
朝顔の観察中疑問に思うことがありました。
なぜ、子葉にはトライコームが無く、本葉にはトライコームがあるのでしょうか?

また、私が気付いていないだけで、子葉にもトライコームがある場合、なぜ本葉のほうが毛の量が多いのでしょうか?

宜しくお願いします。
斉藤 さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
まず子葉と本葉とは何かを理解する必要があります。子葉は「種子の葉」の意味で種子の中にある葉です。受精卵が発生を始めて茎の生長先端、葉、茎、根、根の生長先端が作られ幼植物の原型が形成されて発生は一旦停止し休眠状態に入りますが、このときできた葉が子葉、つまり胚発生の過程でできた葉が子葉で胚の一部です。因みに、種子内の茎は胚軸、根は幼根と呼ばれます。一方、本葉は発芽後、茎の成長先端から形成されてくる葉で活発な光合成で個体の成長を支えます。子葉は発生的に本葉とは異なったもので、形態も、役目も本葉とは異なります。つまり、発芽後幼植物が本葉を作り、光合成によって成長できるまでの栄養を供給する役目をもつのが子葉です。発芽したとき子葉が地上に出るものがあり、本葉のように光合成機能を獲得する場合もありますが短命で、本葉が出れば役目を終えて脱落するのがふつうです。地中にとどまる子葉もありますが貯蔵栄養が消費されれば役目を終えます。子葉が1枚だけの種(単子葉類とされていますが、主に胚盤という形になって胚乳栄養を発芽成長する幼植物へ供給する役目をもつようになっています)、2枚(双子葉類とまとめています)、数枚(裸子植物、マツなど)と数も形態も多様です。
一方、トライコームは表皮細胞から形成される構造体で、その形態、機能は多様です。これらについては本Q&Aの登録番号4216, 4110, 2383, 1993, 1742などをご覧下さい。同一の種であってもトライコームができる場所、形、機能はさまざまで子葉のように一時的に必要な器官では形成されない場合もありアサガオはその1例でしょう。トライコーム形成の分子的解析はシロイヌナズナでかなり進んでいて、形成に必要な遺伝子群、形態、数などを支配する遺伝子群などが判ってきています。そのため、種によって子葉にトライコームが形成されるものやされないものがあり、これらは種による遺伝子の働き方のちがいによっています。言い換えれば、茎、葉、根、花の形が種によって違うように、トライコーム形成の遺伝子群の働き方が植物種、器官、組織によって違うためです。本葉は光合成ばかりでなく多様な成分合成、分解(物質代謝)の場でその1つの現れとしてもトライコームの有無、形、働きは器官、組織によっても多様になっています。


今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-06-09
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