一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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核型分析に関して

質問者:   大学生   鈴木
登録番号0483   登録日:2006-01-24
私は今、モチノキ科の核型分析(根端分裂組織を用いて)を行っています。

押しつぶし法を用いているのですが、手順は以下のように行っています。

① 0.002Mの8-Hydroxyquinolineに4時間浸す(室温:約20℃)。
② 45%酢酸に約2時間浸し固定する(冷温:約4℃)。
③ 60℃の1N-HClで約1分、解離する。
④ 1%酢酸オルセインで2時間から一晩かけて染色する。
  その後押しつぶす。

しかし、見える画像は、丸い粒の様な感じで動原体が確認できません。
見えたとしても重なりが激しく分析できる画像ではありません。
上記の①〜④の工程で不備があるのか、また、押しつぶしの技術の問題なのか全く検討がつきません。

お忙しい中、大変申し訳ありませんが宜しくお願い致します。
鈴木さん

核型分析についての質問(登録番号0483)に対して千葉大学園芸学部の木庭卓人先生に回答していただきました。以下の通りです。このアドバイスに従っ
て、処理の時間、試薬の濃度、資料のサンプリングの時期などいろいろ検討して、モチノキに最適な条件をみつけて下さい。


回答
染色体が丸い粒のような感じで動原体が見えないとのことですが,おそらく中期の最も凝縮した状態の染色体ではないかと思われます。核型分析に供するためには完全な中期より前期に近い前中期の染色体のほうが適しています。そのためには前処理を短めにすることがひとつの工夫です。ヒドロキシキノリンで4時間前処理をしておられますが,思い切って短く2時間〜3時間に短縮してみてはどうでしょうか。もうひとつ気になるのは,1%酢酸オルセインで2時間〜一晩かけて染色されていることです。長すぎるように思います。組織が凝固してしまい,押しつぶしても染色体が細胞から広がり出ることができない状態で,染色体同士が固まって識別できないと思います。1時間半が限度でしょう。スライドグラス上で根端を染色するのであれば1%オルセイン溶液を1滴たらし45%酢酸を張った容器に密閉して10分〜30分染色すれば十分です。その後,カバーグラスをかけて爪楊枝で軽くたたき,押しつぶして観察します。いい染色体標本を得るためには,新鮮で分裂の盛んな根端を使うこと(季節も重要な要因です),適切な前処理(前中期の染色体を得るため),十分固定すること(コムギでは最低2日),適切な染色時間,押しつぶしのテクニックが必要です。上記の点を参考に工夫してみてください。

 木庭 卓人(千葉大学園芸学部)
JSPPサイエンスアドバイザー
 勝見 允行
回答日:2006-02-08
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