一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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青色または赤色の光がなくても、緑色の光だけで光合成できるのか?

質問者:   高校生   F.K
登録番号4892   登録日:2020-09-30
素人質問で恐縮です。
紅藻はアンテナ色素としてフィコビリンを持っているため、緑色の光を光合成に利用できるそうですね。
ということは、紅藻は緑色の光だけでも光合成ができる、つまりクロロフィルaやβカロテンはほとんど光を吸収せずにフィコビリンが吸収した光だけで光合成ができるということでしょうか?
F.Kさん

みんなのひろばへようこそ
質問を歓迎します。
光合成のエネルギー変換の中心的反応は光化学反応で、吸収した光エネルギーを酸化還元のエネルギーに変換しています。光化学反応はタンパク質やクロロフィルから成る非常に複雑な光化学反応中心複合体によって行われ、複合体の合成には多大の資材の投入が必要です。資材の節約のために、またクロロフィルがほとんど吸収できない波長の光を吸収してそのエネルギーを光化学反応系に伝えることにより光化学反応を駆動するために、光成生物はその生物群に特有の光合成色素系(アンテナ色素系)を進化の過程で獲得してきました。特有なアンテナ色素として、例えば、紅藻は緑色の光をよく吸収するフィコエリトリンを、シアノバクテリアは黄⁻オレンジ色の光をよく吸収するフィコシアニンを、褐藻類は青緑色の光をよく吸収するフコキサンチンを持っています。アンテナ色素が違っても、吸収した光は結局は光化学反応系に伝えられ、光化学反応を駆動するのに利用されます。話を質問にもどしますと、十分な光強度があれば、緑色の光だけで、光化学反応を駆動して成長できると考えられます。

なお、「みんなのひろば」で、「紅藻」を検索語として調べると関連事項の解説が出てきますので、こちらも参照してください(登録番号3532, 1196, 0893など)。
櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-10-22
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