一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物の免疫システムとクリスパーキャス9の違いについて

質問者:   会社員   ヨッシーキャスナイン
登録番号4947   登録日:2020-12-24
ノーベル賞受賞のクリスパーキャス9は、微生物の免疫システムを応用したものとのことですが、植物の免疫システムであるRNAサイレンシングとの違いがよくわかりません。原理は同じで、技術的なものの違いでしょうか。よろしくお願いいたします。
ヨッシーキャスナイン様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
まずご質問への答えを言いますと、「原理も違うので、技術的にも違います。」 
簡単にその理由こ説明いたします。最近の遺伝子操作の技術ではCRISPER-Cas9、TALEN、RNAiなどが使われています。これらは原理的に大きな違いがあります。CRISPER-Cas9( TALENも)は標的とする遺伝子を削除してしまうので、”Knockout(ノックアウト)"方式と呼ばれています。Crisper-Cas9で操作すると、要するにDNA鎖の上で標的の遺伝子座がスポット抜けてしまうので、その遺伝子の発現はなくなります。しかし、改変したり、修繕したりなどして新しく遺伝子を組み込むことができます。つまり、遺伝子コードを変更することができます。他方、RNAi方式は shRNA(short hairpin RNA:短鎖ヘアピンRNA)とか siRNA(short interference RNA:短鎖干渉RNA)とよばれる短鎖のRNAiを使って標的の遺伝子をブロックすることでその遺伝子の発現を抑制する、つまり黙らせる(silence)もので、”Konochdown:ノックダウン)方式と呼ばれています。だから遺伝子自体は残っていますので、その遺伝子自体の発現がある程度残ることもあります。つまり、RNAi方式だと遺伝子コードの変更はできません。抑制の度合いが異なった遺伝子発現を伴うことになります。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-12-26
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