一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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樹皮について

質問者:   一般   もり
登録番号5274   登録日:2021-11-10
公園に伐採された太めの枝がおいてあり、横から見てみると中身が腐敗して無くなり樹皮だけになっていました。ソメイヨシノのものだったかと思います。

そこで質問なのですが、樹皮はどうして腐敗しにくいのでしょうか。

また、色々調べてみたのですが、外樹皮の部分も心材の部分も細胞が死んでいるそうなので、どちらも腐敗しやすい気がしますがなぜ樹皮の方だけ腐敗しにくいのか気になります

よろしくお願いいたします。
もりさん

回答は森林総合研究所の吉田和正博士にお願いいたしました。

【吉田先生の回答】
みんなのひろば 植物Q&Aへのご質問、ありがとうございます。
樹皮が腐りにくいのは昔から知られていて、野山を歩いていると皮だけになった枝を見かけることがあります。樹皮は外樹皮と内樹皮(師部)に分けられますが、ここではご質問にあるように死んだ細胞からなる外樹皮を指すものとしてお答えします。
樹皮には木部(辺材や心材)と同じようにセルロースなどの多糖類とリグニンが含まれますが、それらに加えて、樹皮フェノール酸という難分解性の成分が多糖類やリグニンを覆うように存在しています。さらに、スベリンやタンニンという分解されにくい物質も含まれています。樹皮のタンニンは加水分解されにくい縮合型と呼ばれるタイプが多く、そのタンニンが重合したものが樹皮フェノール酸です。数種の白色腐朽菌(糸状菌:カビの仲間)で樹皮フェノール酸を分解する実験では、リグニンに比べ著しく分解が困難であったという報告があります。これらのことから、樹皮には微生物に分解されにくい物質が含まれるため、木部に比べて腐りにくいと考えられます。
サクラ(主にヤマザクラ)の樹皮は、「桜皮(おうひ)」という民間薬として鎮咳、去痰、湿疹やじん麻疹の治療に昔から使われてきました。桜皮にはサクラネチン、ゲンカニンというポリフェノールの一種のフラボノイドが含まれます。サクラネチンはイネにもあり、いもち病を引き起こす糸状菌に対して抗菌性を示すことが知られています。サクラの樹皮の腐りにくさには、そのような物質が関わっているかもしれません。

(参考文献)
・幡 克美(1967)樹皮の化学的性質,材料,16(169):777-783
 (この論文はネット検索で閲覧できます。)
吉田 和正(森林総合研究所・北海道支所)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2021-12-23
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