一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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トマトの追熟について

質問者:   会社員   ルビスコ・タバスコ
登録番号5350   登録日:2022-03-18
トマトの色の変化については積算温度が関係していると伺ったことがあります(大学生時代であるか、記憶は定かでありませんが…)。
実際にトマトを0℃付近で保管すると低温障害は見られましたが、1ヶ月経過後も緑を保っていました。
しかし、他の方のQ&Aでは、「エチレンが重要な役割を担っており、エチレンが働かなくなるとクロロフィルが分解されないため緑のトマトになってしまう」とのご回答を拝見しました。
そこでご質問なのですが、温度によらずエチレンにさえ触れさせなければトマトの色の変化や追熟は抑えられるものなのでしょうか。
宜しくお願いいたします。
ルビスコ・タバスコ 様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。

トマトの果実部分が生きた植物体上で完熟に至る過程では、色・風味や香り・食感などの性質が劇変します。このような劇的な変化は、緑色色素クロロフィルの分解と赤色色素リコペンを中心とするカロテノイドの合成・芳香(誘引)物質の合成・細胞壁成分の分解など、同時的に進行する多岐にわたる物質変換反応の結果としてもたらされます。この代謝過程では植物ホルモンであるエチレンも合成され、体内にあってエチレンは果実の完熟に至る一連の代謝過程を加速するように働くものと考えられます。雪崩のように一方向的に進行するこの成熟過程は遺伝情報の発現制御に基礎をおくもので、酵素により触媒される温度依存性の反応として進行します。

植物体から切り離された成熟果実をエチレン処理して「追熟(post-harvest ripening)」を促す場合においても、生きた植物体上の場合と大局的にはほぼ同じ代謝過程が進行するものと考えられています。反応は温度依存的に進みますので、十分に冷やされた場所に置かれた場合には、たとえエチレンに触れることがあっても熟成の進行は抑えられるものと思われます。一方、温度が高い場合には、体内でエチレン生産が行われるので、外部からエチレンを与えないように工夫しても果実の熟成は進行するものと思われます。

登録番号4178のQ&Aをお読みいただいての質問とお見受けします。本コーナーには他にも関連するQ&Aが掲載されておりますので、そちらの方もご参照ください。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-04-04
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