一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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エチレンガスの実験が失敗したのはどうしてですか

質問者:   中学生   mn
登録番号5437   登録日:2022-08-21
夏休みの自由研究で、エチレンガスの実験をしました。
果物から出るエチレンガスが、バナナの追熟を促すということを証明しようとしました。
青いバナナを用意して、3つ比較してみました。袋は密封性の高いジッパーの袋にしました。
①バナナとリンゴを袋に入れたもの
②バナナだけを袋に入れたもの
③そのまま室内に置いたもの

私の予想では①→②→③の順で、バナナが黄色に変化していくと思いました。
①はリンゴが一番エチレンガスを出し、②はバナナ自身のエチレンガスが袋に満ちると考えました。
しかし、結果は③が一番早く黄色に変化し、①と②は同程度に遅く黄色になりました。
どうしてでしょうか。
実験が失敗したのだとしたら、どこに原因があったのでしょうか。
mn さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
予想外でびっくりなさったことでしょう。おそらく、「密封性の高いジッパーの袋」が曲者です。袋の材質はほとんど単純なポリエチレンでたぶん厚さ0.03mmから0.08mm程度と思います。ポリエチレンはエチレンと同じ仲間の物質ですからエチレンと親和性が高く、エチレンを吸収しやすいものです。①、②の場合はリンゴやバナナから発生したエチレンは積極的に袋の材質に吸収され、外へ漏れてしまいます。その結果、①、②では密閉した袋の中はエチレン吸収剤を入れたと同じことになります。いっぽう、③ではバナナから発生したエチレンはバナナからゆっくりと拡散でしていきますから、表面にはごくうすくエチレンが滞留しています。その結果、熟成が進行したと考えられます。
密閉保存容器という本体、蓋がポリプロピレン、シリコンのパッキング付きでバックル式に密閉できる容器が市販されています。キッチン用品のコーナーにあり、いろいろな大きさがあります。値段は袋よりも高価ですが2個あればmnさんが試す実験には使えると思います。材質がポリエチレンのものもありますが、本体の強度を保つため壁の厚さは厚く、ポリエチレンの構造が袋(柔らかい)とは違うようで、かつて私は微量のエチレンを与えるために使ったことがあります。
もう一つ注意することはリンゴの品種によってはエチレンをたくさん発生するとは限りません。安い品種で十分、それを厚さ1cmくらいに切って用いられたらよいと思います。切るとエチレン発生が多くなります。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-08-22
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