一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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落葉樹と常緑樹の葉について

質問者:   自営業   ミント
登録番号5516   登録日:2022-11-24
紅葉に早生,中生,晩生があり、早生から色づき始め落葉するとTVで知りました。
茶農家ですが、常緑樹であるチャノキは晩生から芽が休眠して、早生ほど晩秋まで芽吹くようです。

落葉樹の早生の色づきが早いということは、葉っぱの機能停止が早いということだと思うのですが、反対に常緑樹は、早生ほど晩秋で低温になっても葉が活動しているというのは、落葉樹と常緑樹のそれぞれの戦略なのでしょうか?

よろしくお願い致します。
ミント さん

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。
常緑樹であるチャノキ(Thea sp.)の場合には、摘み取りに適した新芽の芽生える時期が早いか遅いかの性質に基づいて、早生や晩生などが区別されているものと理解します。これに対して、落葉樹の紅葉の場合には葉の色づきの始まりの時期によって早生や晩生が語られるようで、両者で事情は違っているように思えます。チャノキの場合には、早生のものでは晩秋に至るまで芽吹きが続くのに対して晩生のものでは早期に芽吹きが止まるとのこと、この事実は大変興味深いと思います。この場合には、葉の成長に関わる代謝系で鍵となる反応の温度依存性が問題で、芽吹きが終了する秋においても新芽が芽吹く春においても、生理機能が停止するか開始するかは専ら温度によって決められているとして説明できるかも知れません。

他方、落葉樹全般を見渡した場合には、紅葉の早い樹木は春の芽生えが遅くて紅葉の遅い樹木は春の芽生えが早いと言った一般的な関係性があるようには見受けられません。身近な一例を挙げれば、ソメイヨシノが紅葉するのは他の樹木に比べるとかなり早い時期であるにも関わらず、その春の芽吹きも早い部類に属しており、(他の落葉樹との比較においては)ご指摘のチャノキに見られるような関係は成り立っていないように見受けられます。なお、落葉樹全般での比較ではなく、個別の種などに限定して調べると、チャノキのような場合もあるのかも知れません。

落葉樹と常緑樹については、いろいろな角度からの話題が本コーナーには掲載されておりますので、それらもご参照ください。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-11-26
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