一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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じゃがいもの芽の色について

質問者:   会社員   はっしー
登録番号5582   登録日:2023-03-16
デジマとメークインを育てるため、現在(3月中旬)、芽出しをしています。ジャガイモの芽は緑色と思っていたのですが、黒に近いような紫の芽が出ています。インターネットで調べてみると紫のジャガイモでは紫色の芽がでるようですが、買ったのは通常のジャガイモ(白というか黄色の)です。

紫色の芽が出ることもありえるのでしょうか。

教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
はっしー 様

ご質問、有り難うございます。
植物の遺伝・育種に造詣の深い東北大学大学院生命科学研究科の渡辺正夫教授から、下記の回答が寄せられました。頂きましたご質問では栽培の条件や環境が分かりかねますが、おそらく回答で書かれている寒暖差ストレスが大きいのではないかと思われます。

【渡辺先生の回答】
ジャガイモについての質問、ありがとうございました。アブラナの仲間についての研究が専門ですが、育種・遺伝学を背景に研究していることもあり、質問の内容について、いくつかの可能性を回答させて頂きます。

紫色の色素のことを一般的に「アントシアニン」と呼びます。こうした色素が植物で発現する場合、植物がストレスを受けている場合が想定されます。温度、水分、紫外線など、色々なことがストレスになります。質問内容にあるジャガイモ品種「デジマ」、「メークイン」は少し違った遺伝的背景を持っています。「デジマ」は品種名の通り、長崎・出島に由来し、西南暖地で春秋の二期作に向いています。それに対して「メークイン」は原産地のイギリスから北海道に導入された品種です。「デジマ」よりは広域適応性があり、全国的に栽培されています。生育温度ですが、15℃から24℃が適温とされています。春先の霜が降りるようなとき、あるいは梅雨前に30℃近くになるような環境に晒されるときもありますが、ジャガイモにとってはある種のストレスを受けていると考えられます。

さて、3月中旬に植付け・芽だしをしているということを考えると、今年はソメイヨシノが最速というくらい早く咲いている気象条件なので、ストレスは受けにくいと思います。一方で、回答をしている渡辺は仙台に住んでおり、3月中旬に雨でなくて、みぞれになったのを記憶しています。全国的に高めの気温でしたが、一方で急激な寒さが途中で挟まるような寒暖の差が激しい気温の推移でした。植物がある種、温暖な気温に適応していたところに、急激な寒さ、朝夕の寒暖差が大きいことが影響して「アントシアニン」が発現した可能性があります。実際、北陸地方でジャガイモを栽培されている方にお話を聞きましたが、今年、ジャガイモの植え付けをしたところ、同じように「紫色」の着色があるということが観察されています。はっしーさんが観察されていることが、あちこち起きているのだと思います。

もう1つの可能性は、市販の段階で品種が取り違えられていたということがあるかも知れないですが、ジャガイモを植え付けるとき、いくつかに切って、その断面が黄色になっているのを確認されているので、品種はいわれるとおりのものだと思います。

作物栽培の何かのヒントになれば幸いです。
渡辺 正夫(東北大学大学院生命科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
山谷 知行
回答日:2023-03-24
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