植物Q&A

チェックリストに保存

無胚乳種子

質問者:   教員   レイコ
登録番号0904   登録日:2006-07-17
1.高校生物の授業で、今、被子植物の生殖をあつかっています。
重複受精をしたあと胚乳が発達せず、退化して子葉に養分をためる無胚乳種子が存在するということは、こちらのほうが、進化の過程から考えると後に出現したと思われますが、進化から考えて子葉に養分を蓄えることのメリットは何だと考えられていますか?

2.花粉管の伸長に伴い花粉管核も精細胞も先端に送られていきますが(原形質流動による?)、助細胞に達した後、花粉管核はどうなりますか?
また、精細胞が卵細胞と中央細胞に迷わず1つづつ送られて受精できるしくみを教えてください。
レイコ さま
 みんなの広場へのご質問有難うございました。頂いたご質問の回答を、植物の受精についての研究をなさっておられる東京大学の東山哲也先生にお願いいたしましたところ、以下のような回答をお寄せ下さいました。現時点でのこの分野の最新の知識に基づいた回答ですので、お役に立つものと思います。


1.
 たとえば「子葉の体積を増大させることで発芽直後の光合成能を増大させる」といったことを想像することもできますが、メリットがあるのかどうかもよくわかっていません。成熟種子の段階で、胚乳として養分を胚の外に貯め込んでいるか、胚乳の養分を吸収して子葉内に貯め込んでいるのかの違いなので、本質的には大差ないかも知れません。しかし視点を変えると、胚と胚乳は重複受精によって生じた異なる“個体”として見ることもできます。胚が兄弟的な組織である胚乳を飲み込んでしまうようなもので、実は大きな変化かも知れません。今後の研究の展開に期待です。

2. 
花粉管核と精細胞は一体となって花粉管先端を移動します。それらの表面にはミオシンという分子モーターがついていて、アクチン繊維に沿って移動すると考えられます。助細胞まで到達すると、花粉管は先端が破裂し、内容物を放出(原形質吐出)します。花粉管細胞の役割はここまでで、精細胞などと共に放出された花粉管核は、そのまま細胞外で退化します。なお助細胞も、花粉管が内容物を放出し始めると、平均で0.6秒という短い時間で破裂します。こうしたダイナミックな放出の過程は、胚嚢が突出する珍しい植物トレニアで、はじめて生きたまま撮影され、日本ではいくつかのビデオ教材(「種子の中の海」など)でも見ることができます。
 2つの精細胞が卵細胞および中央細胞に迷わず1つずつ送られて受精する仕組みについては、全くわかっていません。その仕組みを明らかにするには、その様子を直接見ることが重要だと思いますが、誰一人として撮影に成功した人はいません。植物の精細胞は小型であるため、精細胞を生きたまま可視化する技術、高度なライブイメージング技術が必要だからです。しかしその条件も整いつつあります。世界中で我先に重複受精の撮影に成功しようと競争していることから、そう遠くない将来、重複受精の様子が明らかになると思います。また一方で、精細胞が2つに分裂できない突然変異体が最近見つかり、その精細胞は必ず卵細胞とだけ受精することがわかりました。重複受精の仕組みを解く何らかのヒントがあると思われ、大変興味深い現象です。

東山 哲也(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻発生生物学研究室)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2006-07-20
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内