一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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細胞内の糖の濃度について

質問者:   高校生   あこ
登録番号0945   登録日:2006-08-05
植物観察をしています。
疑問に思ったので教えてください。

光に当たって濃い緑になった葉ともやしのように日陰で白っぽく(黄色っぽく)なった葉があります。
おそらく葉緑素の量が違うと考えられますが、葉緑素は光によって増えたり減ったりするものなのですか?
またこのような植物では当然、緑の濃い植物の方が光合成量も多く、薄い葉の植物よりたくさんのデンプンを合成しているはずです。
そうなると、理屈ではこの2つの植物のデンプンまたは糖の量を測定できるとすると一定数の細胞内のデンプン濃度もしくは糖濃度は異なると考えてよいのでしょうか?

さらに私が観察している植物はイネ、トマト、トウガラシ、小松菜ですがこれらはデンプン葉と糖葉のどちらに分類されるのでしょうか?
これらについて記述された資料をみつかられなかったのでできれば教えてください。

またデンプン葉でも栄養として使われる過程では細胞内に糖として存在するタイミングがあると思います。
デンプンを多く蓄えた葉では、このようなタイミングに細胞の糖濃度を測定すると当然糖濃度が高くなっていることがあると思っていますが、それは正しい考えでしょうか?

よろしくご指導お願いします。
あこ さん

質問を寄せて下さりありがとうございました。この質問には、つくばにある農業生物資源研究所で光合成の研究に取り組んでおられる徳富(宮尾)光恵先生からご回答をいただきました。あなたの植物観察に新しい展開があったら教えて下さい。


葉緑素の量は光によって調節されています。同じ植物でも、弱い光で育てると葉緑素が多く、強い光で育てると少なくなります。これは、葉緑素のほとんどが光を集める働きをしているためです。光が弱いと光を効率よく利用するために、葉緑素の量を増やします。光が強いと逆に葉緑素の量を低下させます。また、葉に光が当たらなくなると(例えば、植物の根元に近い古い葉)、葉緑素の量は徐々に減ってきます。

この場合は、光が当たらないため、葉緑素以外にも光合成を行うための仕組みが徐々に壊れていきます。これを葉の老化といいます。葉緑素の量と光合成が比例するかどうかですが、これはケースバイケースです。弱い光で育てた葉と強い光で育てた葉では、育った光の強さで光合成を比べると、強い光で育てた方が葉緑素は少なくても光合成量は多くなります。老化している葉の場合は、葉緑素の減少にともなって光合成量も低下します。老化が始まって葉の色が薄くなってきたら、ほとんど光合成は行っていないと考えていいでしょう。なお、被子植物では葉緑素の合成には光が必要です。暗闇で発芽させて育てたもやしには葉緑素はありません。もやしに光を当てると葉緑素が合成され、数時間で緑になります。

デンプンと糖の関係ですが、デンプン葉でも糖葉でも光合成で炭水化物を作る仕組みは同じで、糖が優先的に合成されます。糖は葉から他の器官に輸送されますが、糖の合成量が輸送量を上回ると糖の代わりにデンプンが合成されます。糖が輸送できるようになると、デンプンから糖が作られます。デンプン葉では、デンプンの分解は昼、夜ともに行われますが、デンプン量は昼でも夜でもあまり変わりません。糖濃度は昼間増大し、夜低下します。ですから、デンプン葉の場合は、デンプン濃度あるいは糖濃度が必ずしも光合成量を反映するとはいえません。糖葉の場合は、昼間デンプンが貯まりますが、夜には糖に分解され輸送されます。この場合は、昼間のデンプン濃度が光合成量を反映すると言っていいでしょう。

なお、イネは糖葉、トマトはデンプン葉です。トウガラシ、アブラナはたぶんデンプン葉でしょう。

徳富(宮尾) 光恵(農業生物資源研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2006-08-11
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