ゴマは主要な油脂作物であり、世界中で料理、美容や光源など幅広く利用されてきた。ゴマの種子にはフェニルプロパノイドから派生する一群の植物二次代謝物であるリグナンが豊富に含まれている。栽培ゴマ(Sesamum indicum L.)ではセサミンは代表的なゴマリグナンである。一方、野生ゴマにはエピセサラチンやアラツミンなどのセサミンと構造が類似しているものの光学活性の異なるリグナンを蓄積する系統があるが、それらのリグナン生合成機構は不明である。著者らは(pp. 2278–2287)野生ゴマの一種(S. alatum Thonn.)から同定したシトクロムP450であるCYP81Q3が、基質のピノレジノールに対して栽培ゴマのオーソログであるCYP81Q1とは異なる光学異性体特異性を示すことを明らかにした。このような酸化酵素の基質特異性がリグナン代謝物の光学活性の構造多様化に寄与する可能性について議論している。
カバー写真は開花する栽培ゴマ(2018年7月、中国・武漢市の中国農業科学院油脂作物研究所にてLinhai Wang博士の協力のもと撮影)。
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