植物は強い物理的ストレスにさらされると、発生プログラムを修正することができるが、植物が体細胞胚形成に至る過程はいまだ十分に解明されていない。本号において Baykal は、ムスカリ(Muscari armeniacum)において花茎を完全に切除すると、花器官が本来のアイデンティティを放棄し、新たに胚形成(de novo embryogenesis)を開始するという顕著な発生転換が引き起こされることを示している。この内因性リプログラミングによって、栄養分や植物成長調節物質を外部から添加することなく、発芽可能な地上部球芽(aerial bulbils)が形成される。この過程には、オーキシンおよびサイトカイニン量の特徴的な変化を伴う。これらの結果から、この種が深刻な構造的ストレスを自己維持的な無性生殖へと転換する驚くべき能力を有することが示された。
表紙画像は、物理的ストレスによって体細胞胚形成が誘導された Muscari armeniacum の切除された花茎を示している。花茎表面には、初期の胚形成突起、発達中の球芽原基、形成された地上部球芽が観察され、これらは自然に乾燥した花の残骸の近傍に形成される場合もある。
画像提供:Ulku Baykal氏(トルコ・ギレスン大学 遺伝学・生体工学部)
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画像提供:Ulku Baykal氏(トルコ・ギレスン大学 遺伝学・生体工学部)