植物細胞内では活発な原形質流動が見られ、この動きは 筋肉の収縮と同じように、モーター蛋白質であるミオシンが、ATPのエネルギーを利用してアクチン繊維に沿って滑ることによってひき起こされていることがわかっている。車軸藻は、個々の細胞が巨大で (長さが数cm以上のものもある) その原形質流動は非常に速いことが知られている。しかし、古くから研究されているものの、実際の細胞内にミオシンがどの程度存在し、どのように原形質流動と関わっているのかについて、定量的な研究はなされていなかった。
山本らは車軸藻の細胞中のミオシンの濃度を定量的イムノブロット法により測定したところ、200nM という高濃度で存在することを発見した。写真は、車軸藻細胞内部の蛍光顕微鏡像で、赤い蛍光を発する丸いものは葉緑体、その上を走っている黄色い繊維状の構造の上にミオシンが存在している。
このミオシンがすべてアクチンと相互作用して流動に関わっているとすると、大量のATPが消費され続けることになるが、計算によって求めたその値は呼吸によって作られるATP量を上回ってしまう。そこで、実際に流動に必要なエネルギーを計算してみたところ、呼吸によって作られるATPのわずか 0.2%で十分であることがわかった。以上の結果から、車軸藻のように活発に流動している植物でも原形質流動に必要なエネルギーはごくわずかでよく、ミオシンは大量に存在するが、その 1/100 程度しか原形質流動には関わっていないことが示された。
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