オーキシンシは、光屈性や器官形成などさまざまな作用を持つ、最も古くから知られた植物ホルモンである。最近の研究により、オーキシンのシグナルは、オーキシン応答因子である ARF タンパク質とその作用を抑制する因子の Aux/IAA タンパク質の両分子が相互作用することによって伝達されることが明らかになった。
武藤らは、両因子の分子間相互作用を蛍光相関分光法 (FCCS) で定量することに成功した。この方法では、それぞれの因子に GFP (緑色蛍光タンパク質) と RFP (赤色蛍光タンパク質) をつなげた融合タンパク質を遺伝子操作によって動物培養細胞 (背景に描かれているナマコ状の細胞) に作らせ、細胞内の同一微少空間から発する緑と赤の蛍光を同時に経時的に測定する。微少空間には約50分子と小数の融合タンパク質しか存在しないので、融合タンパク質がその空間に単独で、または別種の融合タンパク質と結合して飛び込んできたり、またはその空間から飛び出ていく過程は、蛍光強度の揺らぎとして正確に測定されることになる。この揺らぎを経時的に分析することによって、両因子の相互作用を実時間で定量的に評価することができる。背景にある細胞は2種類の蛍光融合タンパク質を発現しているので、黄緑色に見える。赤と緑の線のグラフはそれぞれの蛍光強度の経時変化を表していて、少数の分子を観測すると蛍光強度の揺らぎがはっきり現れることが分かる。
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