遺伝子の変異、あるいは mRNA 前駆体のスプライシングのエラーなどによって、 mRNA のコード領域にナンセンスコドンを持つ異常な mRNA が生じ、それが翻訳されるとしばしば細胞に有害な異常タンパク質が作られてしまう。しかし、真核生物は、コード領域にナンセンスコドンを持つ異常な mRNA を選択的に認識して分解・排除する仕組み (nonsense-mediated mRNA decay, NMD) を持っている。UPF1 RNA helicase はこの仕組みにおいて中心的な役割を担う酵素で、酵母からヒトまで高く保存されていることがわかっている。しかし、植物の NMD 因子の発生や成長における役割はこれまで知られていなかった。Yoine らは、シロイヌナズナの AtUPF1 タンパク質の851番目のグリシン (Gly 851) がグルタミン酸 (Glu) へ変異したlba1 突然変異株は、野生型株(コロンビア、Col)よりも長くて重い種子を形成することを報告した。
写真の上部は野生型の種子、下部がlba1 突然変異体の種子である。グラフは、それぞれの株の種子の幅と長さの分布を示しており、lba1 種子の長軸が野生型株種子よりも長いことが明らかである。組織学的、遺伝学的な解析から、lba1 突然変異株の長い種子は母体の遺伝子型によって決められる胚嚢サイズに原因があり、AtUPF1 の変異によって胚珠の作られる間隔が拡がり、それによって長い胚嚢ができるためと推定される。AtUPF1 の T-DNA 挿入破壊をヘテロに持つatupf1-3 (+/-) 株からは正常な大きさのaupf1-3 (-/-) 種子が作られる。しかし、aupf1-3 (-/-) 種子は発芽して幼根が種皮より出た段階で成長が止まってしまうことから、AtUPF1 は芽生えの成長に不可欠であることも明らかにした。
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