シロイヌナズナの葉にジャガイモ疫病菌 (Phytophthora infestans) を感染させた図。小八重善裕ら (2006, vol. 47, No. 3, 309-318) はシロイヌナズナの ABC トランスポータの1種である AtPDR8 に注目し、その遺伝子破壊株について植物病理学的な表現型を観察した。AtPDR8 は PDR サブファミリーの中では最も多く構成的に発現蓄積する分子種である。ここで用いている P. infestans は、ジャガイモに感染して発病させるが、シロイヌナズナを宿主とはしない卵菌である。シロイヌナズナの野生株および atpdr8 変異株の葉に P. infestans の胞子懸濁液を接種し、24時間後にトリパンブルー染色で細胞死の状況を写真撮影した。野生株では菌糸の侵入が見られず (上左図)、細胞死も観察されない (上右図)。一方、atpdr8 変異株では菌糸が葉の細胞に侵入しており (下右図)、多数の細胞の死が観察された (下左図)。 AtPDR8 がないと、本来抵抗性を示す菌に対しても感受性になり簡単に侵入を許していることがわかる。今回の結果は、AtPDR8 は植物が病原微生物に対する応答に関連する重要な分子を基質として認識し膜輸送することを示している。AtPDR8 が植物病理応答に関わっていることを示した最初の発見である。なお、中央の図はシロイヌナズナ野生株の幼苗である。
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