“Roses are red, violets are blue. Sugar is sweet, and so are you.” (バラは赤くてスミレは青い。お砂糖は甘くて君も)―恋人たちがささやく有名なこの詩に綴られているように、バラの花は赤いものとされています。また、英語の Blue rose には、「不可能、できない相談」 という意味があるほどで、青いバラは古くから夢とされてきました。青色のバラが存在しない最大の理由は、バラのアントシアニンの発色団はシアニジン (左上の構造式) で、多くの青い花に含まれるデルフィニジン (右上の構造式) という成分を合成できないことです。
バイオテクノロジーを利用すると、遠縁の植物の持っている遺伝子も品種改良に利用して新しい性質を持った植物を作ることができます。勝元らは、サンシキスミレから得た、デルフィニジンを作るために必要な酵素の遺伝子 (通称青色遺伝子) をバラに導入することにより、バラの花びらでデルフィニジンを蓄積させることに成功しました。デルフィニジンが合成されても見た目にどれだけ青く見えるかはバラの品種にも拠りますので、青く見える素質を持ち、かつ赤い色素があまりできない品種を選んで、青色遺伝子を入れました。その中からデルフィニジンが総色素の95%程度になり、花の色が今まで知られているバラよりも青くなったものが得られました。
さらに、別の品種で、赤い色素の合成を抑制し、青色遺伝子を働かせると、デルフィニジンが100%近くになりました。ほとんどデルフィニジンだけを作るという性質は、その子供や孫にも伝わりました。左下の花は元の品種、右下は、この方法で作り出した青バラです。20年ぐらいするとバラの色はもっと多彩になっていることが期待できます。将来が楽しみですね。
もっと青くするためにはいろんな工夫が必要ですので、さらに研究が続けられています。同じような技術を用いて作られた青いカーネーションはすでに市販されていて、青いキクやユリの開発も進められています。
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