気孔は葉の表面に多く分布している小さな孔で、植物はここから大気中の二酸化炭素を取り入れて光合成に使い、根から吸収した水を大気中へ放出します。気孔は日周変化に伴って毎日開閉を繰り返しますが、乾燥や大気汚染に際しては急速に閉鎖します。こうした気孔運動は、気孔を形成する一対の孔辺細胞の体積変化によって行なわれており、主に孔辺細胞の6割程度の体積を占める液胞と呼ばれる巨大オルガネラの膨張と収縮がその体積変化の大部分を占めると考えられています。そこで気孔開閉と液胞構造変化との関係を調べるために、Tanaka らは液胞膜を蛍光タンパク質で可視化したシロイヌナズナの形質転換体を使って、孔辺細胞の液胞を観察しました。CT スキャンのように、液胞断面の蛍光写真を連続して十数枚撮影し (左下、緑の写真)、液胞の輪郭線を積み重ね (左中の図)、隣接した点を繋いで立体像を作りました (左上の図)。その結果、気孔閉鎖時の液胞は一枚の断面像では分断されているように見えますが、その立体構造をさまざまな角度から観察すると連続した構造を保っていることがわかりました。このことから、孔辺細胞は液胞収縮時に余剰となる液胞膜を液胞内部に折りたたんで貯蔵することで急速な気孔閉鎖を可能にし、反対に気孔開口時にはその蓄積した液胞膜を再利用して液胞を膨張させている可能性が示唆されました。また、今後、顕微鏡画像の解析技術の進展が細胞内構造の動態解明に大きな役割を果たすと考えられます。
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