微小管は真核細胞に普遍的に存在する細胞骨格成分であるが、細胞内での並び方や機能の仕方をみると陸上植物のそれは独特である。並び方の特長は、動物や藻類の細胞に見られるような、片方の末端を一点においた放射状の並びをとらないことであり、これは中心体と呼ばれる微小管形成中心として働く小器官が細胞内に存在しないことによる部分が大きい。陸上植物細胞は微小管形成部位を散在させることで様々な形態の非放射状微小管配列を作り出すことを可能にしている。
後藤と浅田は、植物特有のキネシン様タンパク質 (分子モータータンパクの一種で細胞内物質輸送に関わる) である TBK5 を緑色蛍光タンパク質 (GFP) との融合タンパク質としてタバコ培養細胞内に一過的、付加的に発現させると微小管の並びが放射状のものに転じることを報告した。表紙写真は、そのような変化が誘導された細胞である。GFP-TBK5 融合タンパク質 (緑色) は、核 (n) 近傍の一点へ集合しつつある。この集合にともなって GFP-TBK5 の粒子を中心に置いた放射状微小管配列が生じることが明らかにされた。陸上植物がもつ微小管形成部位散在化機構は、過剰に蓄積した TBK5 の働きによって著しく損なわれる性質のものである可能性が示唆される。
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