16世紀にオランダでチューリップの品種改良が始まって以来、青いチューリップの開発は1つの大きな夢ですが、現在まで成功していません。チューリップを上から見ると、花の内側の花底が青い品種がいくつか存在しています。チューリップでの青色発現が花底部分に限られることから、花弁の上部と下部では何か生理的な違いが存在していると考えられます。写真は ‘紫水晶’ と呼ばれる品種で、花全体は紫色で花底のみ青色を示します。Shoji らは花弁表皮細胞から単離した紫色プロトプラストと青色プロトプラストを材料に、細胞に含まれるアントシアニン色素や助色素、液胞内 pH、金属元素を詳細に調べました。その結果、紫色細胞と青色細胞とで、アントシアニンや助色素の組成、さらに液胞 pH も全く同じでした。違っていたのは、鉄イオンの量だけで、青色細胞には紫色細胞の25倍もの量の鉄イオンが蓄積していました。花底部の青色発現はアントシアニンと鉄イオンとの錯体形成によることが明らかになりました。
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