ザゼンソウ (写真) は、日本を含む東アジアの寒冷地やアメリカの北東部などで自生する発熱植物として知られています。赤い袈裟を着た僧侶が座禅を組んでいる姿を連想させることから 「ザゼンソウ (座禅草)」 という名前がついたようです。赤い袈裟が 「仏炎苞」、僧侶が 「肉穂花序」 になります。本植物は、氷点下を下回る寒冷環境下においても発熱器官である肉穂花序の体温を20℃前後に保っています。
ザゼンソウには、脱共役タンパク質 (UCP) という動物の熱産生に関与するタンパク質が豊富に含まれており、熱産生との関わりが注目されています。UCPはミトコンドリア内膜に局在して、膜内外に形成されたプロトン濃度勾配エネルギーを積極的に解消することにより、呼吸の活発化とともにプロトン濃度勾配として蓄えられたエネルギーを熱として放出すると考えられています。そこで私たちは、ザゼンソウにおいて主として発現しているUCPに関して詳細な解析と分子同定を行いました。その結果、ザゼンソウでクローン化された2つのUCP遺伝子 (SrUCPA、SrUCPB ) のうち、タンパク質レベルで主として発現しているのはSrUCPAであることを明らかとしました (本号1911~1916ページ)。写真左は、SrUCPAの分子同定を行った際のマススペクトルになります。今後は、SrUCPA遺伝子の進化的な起源や植物の熱産生における具体的な役割などについて明らかにしていきたいと考えています。
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