「チューリップ花弁の開閉と水輸送チャンネル―アクアポリンの関係」
「昼間開いていたチューリップが夕方には閉じていた。次の日の日中にはまた開いていた」 こんな観察をされたことはありませんか。花に10cmほどの茎を付けて生け花にして5℃におくと閉じますし、20℃にすると開きます。暗所で再現できますので、光は全く関係ありません。20℃では茎から花の下部へと水が輸送されますが、5℃では水が輸送されなくなり花が閉じてしまいます。水は生命に必須であり、あらゆる生物に水を通す専用のチャンネルが細胞膜に存在します。このチャンネルはアクアポリンと呼ばれる膜を貫通して存在するタンパク質から構成されています。植物ではアクアポリンをコードする遺伝子は20種類以上も存在し、水チャンネルは液胞膜にも存在しますし、水以外の小さな分子を通すアクアポリンも発見されています。
さてチューリップの温度に依存的な水の輸送が必要な開閉にアクアポリンはどのように関係しているのでしょうか。アクアポリンはリン酸化されて活性型になりますが20℃でチューリップのアクアアポリンもリン酸化され、5℃ではリン酸が外れていることを明らかにしました。4種類の細胞膜に存在するアクアポリンの遺伝子を取り出し、アフリカツメガエルの卵で水輸送活性を調べました。1種類の遺伝子だけが明らかな活性を示しました。リン酸化で活性化され、リン酸をはずすと活性がなくなる傾向を確認しました。リン酸化される場所の予測もできました。細胞膜において実際に存在するモデルを作成し、中央に水が通る穴 (孔) が確認されました。この遺伝子に由来するアクアポリンが、根、球根、葉、茎、花において最もたくさん存在しますので、チューリップ全組織の水輸送に関係する遺伝子であることが予測されました。今後はなぜ5℃でリン酸が外れて水輸送活性が低下するのかを調べていきます。
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