「変異体の解析から見えてくるオーキシンと側根形成の関係」
植物の根系は、発芽して最初に伸びる主根、地上部から発生する不定根、そして、これらの根から発生してくる側根などから成り立っています。
私たちは、モデル植物の1つであるシロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) から側根形成の能力が低下した変異体を見つけ出し、その根や地上部の成長、植物ホルモンの一種であるオーキシンに対する反応、変異の原因となっている遺伝子の発現などを調べました。この変異体は地上部の形が表紙の写真のような折り鶴に似ているので、craneと名付けました (ツルは英語で crane といいます)。
crane 変異体の原因となっている遺伝子について詳しく調べたところ、オーキシンの情報伝達に働く Aux/IAA というタンパク質ファミリーの一員であるIAA18が分解されにくくなっている (安定化している) 可能性があることが分かりました。crane 変異体で側根形成能が低下しているのは、IAA18タンパク質が安定化したことによって、ARF とよばれる側根形成を誘導する別のタンパク質の機能が抑えられてしまっていることが原因だと考えられます。このことは、野生型のシロイヌナズナではIAA18タンパク質が側根の形成に重要な役割をもっていることを示しています。
今回の研究や、過去の多くの研究により、シロイヌナズナの側根や、イネの冠根の形成を制御しているメカニズムが明らかになりつつあります。これらの研究成果から、栽培作物の根系の発達を自由に制御し収量を増やす技術につながることが期待されます。
上原健生1、奥島葉子2、三村徹郎1、田坂昌生2、深城英弘1
(1神戸大、2奈良先端大)
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