「植物の腋芽成長を調節する重力応答」
植物の茎の先端には頂芽と呼ばれる芽があり、これが成長することによって茎が伸長していきます。一方で、葉の付け根には腋芽と呼ばれる芽が存在します。この腋芽は、普段は成長しませんが頂芽を失った時などに、成長を開始して、新たな頂芽をつくっていきます。この、頂芽の存在により腋芽の成長が抑えられる現象は、頂芽優勢と呼ばれ、植物が成長点を空間的に高い位置へと無駄無く移動させ、成長に必要な光や二酸化炭素を効率よく得るために役立っていると考えられます。
では、植物はどのようにして、頂芽の位置を認識しているのでしょうか。私たちは、アサガオを用いてこの問題を解くことにしました。普通のアサガオは、茎を折り曲げる (頂芽が最も高い位置にこないようにする) と、もともとの頂芽の成長は止まり、新たに最上部となった腋芽が成長を始めます。一方で、私たちが解析している枝垂アサガオ (重力応答能力を欠いているため、枝垂れてしまうアサガオの突然変異体) では、茎を折り曲げても腋芽の伸長が起きないことがわかりました。さらに、枝垂アサガオの頂芽を切除 (摘心) すると、普通のアサガオと同様に腋芽が伸長し始めました。このことから、腋芽の伸長が重力応答によって調節されること (重力を感じて最上位の芽を認識していること)、そしてその調節は、頂芽の切除 (摘心) による腋芽成長とは別のメカニズムで行われていることがわかりました。
写真は、解析に用いた2種類の枝垂アサガオの花の写真です。手前の赤い花の系統は、最初に見つかった枝垂変異を持っています。重力に応答できないことで、美しく枝垂れる姿が珍重されています。
PCPギャラリー