2009年はダーウィンの生誕200周年記念の年であるとともに、彼による有名な著作 「種の起源」 が発行されてから150周年にあたります。
ダーウィンは冒険家であり地質学者であるとともに 「種の起源」 では革命的な進化理論を発表しました。彼の進化理論においては動物の例が多数出てきますが、植物における重要な発見も多く、植物の種形成・ランの植物学・屈光性・重力屈性・交配様式など様々な分野において彼の貢献を見てとれます。なかでも植物の生殖様式に関してダーウィンは強い興味をいだいていたことが知られており、サクラソウの自家不和合性に関する詳細な記述が残されていることも有名です。
ダーウィンは晩年、様々な種の植物を材料に用いて膨大な数の交配実験を行い、他家受精と自家受精の影響を調べています (『植物の受精』 ダーウィン著・矢原徹一訳・文一総合出版、参照)。このことからも、彼が実験を基にした理論を大切にしていたことや、植物の生殖に並々ならぬ興味を抱いていたことが分かります。また、彼の観察力から導き出される考察が斬新であり、現代においても輝きを失っていない点には驚かされるばかりです。ダーウィン記念の年も終わりに近づいたこの時期に、植物研究者の皆さんも是非一度、最近の研究成果を振り返りながら彼の功績を再認識してみてはいかがでしょうか?
11月号では植物生殖研究の最近の進歩を簡潔にまとめた総説が掲載されています。かつてダーウィンが注目した自家不和合性に関する研究の最新トピックスも簡単に触れられています。私たちは、分子レベルで生命現象に迫ろうとしていますが、流行にまかせた短期的戦略で、ミクロなレベルの現象のみを追求しがちです。ダーウィンのような広く長期的な視野と実験し続ける熱意を忘れずに、生命現象の不思議を明らかにしていきたいものです。
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