生物間の相互作用では、単独の生物ではなしえないことを相互作用することによって達成することがしばしばみられます。例えば、マメ科植物は根粒細菌と共生することで根にこぶを形成し、大気中の窒素を利用します。また、多くの陸上植物はアーバスキュラー菌と共生することで菌根を形成し、土壌中のリンを効率よく吸収します。これらの土壌微生物との共生によって、植物は栄養の少ない環境でも成長し繁殖することができます。また、根粒菌や菌根菌以外にも、エンドファイトやエピファイトと言われる多様な微生物が植物に生息しており、植物の生育促進や耐病性などの機能を担っています。
近年、ミヤコグサとタルウマゴヤシという2種類のモデルマメ科植物を用いたゲノム・分子遺伝学的解析により、共生に必要とされる26の宿主側遺伝子が特定されました。また、モデル系で得られた知見をダイズやイネなどの主要作物で展開する研究も始まっています。このような研究を積み重ねていくことにより、植物-微生物の生物間相互作用を利用した、持続的な食料生産や環境保全への貢献が期待されています。
今回の特集号では、植物と微生物の共生研究の現在を2編の総説と5編のオリジナル論文としてまとめました。表紙の 「レンゲ、根粒、ミツバチ」 の水彩画は、日本を代表する根粒菌研究者、東四郎鹿児島大学名誉教授によるものです。
PCPギャラリー