トウゴマは熱帯から亜熱帯で栽培される多年性の低木で種子から油をとることができる。種子からとれる油はひまし油と呼ばれ、80~90%のリシノール酸を含むトリアシルグリセリールからなり、エンジンオイル、ペンキ、塗装剤、プラスティック、石けん、薬や化粧品など様々な工業用品に利用されている。
しかし、トウゴマの種子には猛毒のリシンの存在や高アレルギー性の2Sアルブミンが種子に存在するため、遺伝子組み換えを用いて、リシノール酸を大量に生産蓄積する作物の作出が望まれている。これまで、トウゴマから単離されたリシノール酸合成酵素 FAH12 をシロイヌナズナに導入した形質転換植物が作出されたが、リシノール酸の含量を最高17%までしか生産することができなかった。Kim et al. (本号 p.983-993) はトウゴマから小胞体に局在するリシノール酸特異的なエディティング酵素である phospholipid: diacylglycerol acyltrangerase 遺伝子 PDAT1-2 を見いだした。リシノール酸合成酵素 FAH12 と PDAT1-2 の2つの遺伝子をシロイヌナズナに導入すると、リシノール酸の含量を25%まで上昇させることができた。カバーページの写真は雄花のすぐ上に雌花があるトウゴマの花序の写真である。
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