トウモロコシscarecrow変異体の葉組織の表皮に沿った切片像 (共焦点画像)
クロロフィル蛍光 (赤色) は維管束鞘細胞で最も高密度になっている。葉脈の左側には片側2層の維管束細胞があるが、葉脈に近い層の細胞ではほとんど葉緑体がなくなっている。
イネのようなC3作物にC4光合成経路を導入することで、収量を50%増加、さらに水利用効率の向上、肥料使用の削減を可能にすると推定されている。特に乾燥、高温環境で顕著な効果が期待される。C4代謝系がイネ科植物で適切に機能するための鍵となるのは、クランツ構造と呼ばれる葉脈の周囲の同心円構造における維管束鞘 (BS) の分化と配置である。残念ながら、クランツ構造の制御に関わる遺伝子は知られていない。EsauはPlant Anatomy (1953) で維管束鞘は内皮の延長したものと考察している。Slewinskiら (pp.2030-2037) は、トウモロコシの葉において維管束鞘形成が内皮での遺伝学的経路に支配されているかどうかを決めるために、PIN1a-YFPレポーターの発現様式を解析した。このレポーターの発現は根の内皮の指標となるが、葉の維管束鞘細胞の横断側の壁に局在していることが見いだされた。彼らはまた、根の内皮の発生に中心的役割を担うトウモロコシのScarecrow遺伝子 (ZmScr) の二つの独立した変異体の特徴付けを行った。その結果、維管束鞘細胞の増殖、維管束鞘細胞内葉緑体の分化異常、葉脈の方向性異常、細い葉脈の欠失、葉脈密度の減少が見つかった。これらの結果から、C4植物の葉の構造を形成するのに必要な遺伝学的制御要素の多くはC3作物に元々あり、C4の構造に関する複雑な特性の操作は、これまで想像されていたより制御しやすい可能性が示唆される。
PCPギャラリー