ホウライシダの野生型とkac1 変異体における前葉体細胞の葉緑体分布。弱い光の下では、野生型前葉体の葉緑体は細胞表面に均一に分布している (上図)。kac1 変異体の強いアリルkac1-1 では葉緑体は核の周りに凝集し (中央図)、弱いアリルkac1-2 では葉緑体の部分的な凝集がみられる (下図)。背景の像は4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール染色したkac1-2 変異体前葉体細胞の蛍光顕微鏡像である。葉緑体 (赤色) は核(青色) の周囲に部分的に凝集している。
アクチン繊維に依存した葉緑体の適切な位置への運動と定位は、変動する自然界の光環境下に生きる陸上植物にとっては生存に必須の現象である。これまでにシロイヌナズナを用いた研究から、葉緑体の運動と定位に必須な因子として CHLOROPLAST UNUSUAL POSITIONING 1 (CHUP1) と KINESIN-LIKE PROTEIN FOR ACTIN-BASED CHLOROPLAST MOVEMENT 1 と 2 (KAC1とKAC2) の3種類のタンパク質が同定されている。Suetsugu らはこの論文 (p.1854-1865) で、シダ植物ホウライシダとコケ植物ヒメツリガネゴケにおいてもKAC とCHUP1のオルソログ (ホウライシダ KAC1、CHUP1A、CHUP1B とヒメツリガネゴケ KAC1 と KAC2) が葉緑体の運動と定位に不可欠であることを明らかにした。ホウライシダとヒメツリガネゴケの両植物において、KAC あるいは CHUP1 のオルソログを不活性化させると、葉緑体は凝集し、その光定位運動は起こらなかった。これらの結果により、葉緑体の運動と定位の分子機構は陸上植物において保存されていることが明らかとなった。
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