Plant & Cell Physiology
2012 Vol. 53 (9)
「トマト (Solanum lycoperisicum cv. MicroTom) 野生型 (左) とSl-IAA27遺伝子抑制植物(右)の幼葉と成熟した果実」
植物ホルモンの一つオーキシンは様々な植物発生過程において鍵となる制御物質である。Aux/IAA 遺伝子ファミリーは、オーキシン応答性の転写因子 (ARFs) の活性を抑制することで、オーキシンシグナル伝達で核となる役割を担う。オーキシンシグナル伝達過程のさらなる理解を目指して、BassaらはトマトのAux/IAA 遺伝子の一つであるSl-IAA27 の生理学的な役割の研究を行った (pp.1583-1595)。形質転換体の解析から、Sl-IAA27 の遺伝子サイレンシングによって葉のクロロフィル量の減少が引き起こされることが明らかとなった。この現象はクロロフィル生合成に関与する多くの遺伝子の発現レベルが低下していたことと関係している。さらに、形質転換体の果実は小さめで、肥大した胎座には種子をつけないことから、正常な稔性や果実の発達の維持には、ある閾値以上のSl-IAA27 発現が必要であることが示唆された。トマトにおいて、Sl-IAA27 とよく似たSl-IAA9 遺伝子 (Wang et al. 2005) が知られているが、これらの遺伝子は植物の発生過程において、お互いに異なる役割を持っていると考えられる。つまり、同じ遺伝子ファミリー内での機能の多様化が明らかとなった。
Carole Bassa
(Université de Toulouse, INP-ENSA Toulouse, INRA, Laboratoire Génomique et Biotechnologie des Fruits, France).
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(Université de Toulouse, INP-ENSA Toulouse, INRA, Laboratoire Génomique et Biotechnologie des Fruits, France).