「シュウ酸カルシウム結晶をためる遺伝子改変シロイヌナズナの顕微鏡像」
215科以上の植物はシュウ酸カルシウムの結晶をためる。これらの科には数多くの作物種が含まれるが、その結晶形成過程は未だ謎に包まれている。生物による結晶形成過程に新たな知見を得るために、Nakataは、結晶を蓄積しない植物であるシロイヌナズナを土台にして、結晶工学的なアプローチをスタートさせた (pp.1275-1282)。バクテリア由来のシュウ酸合成遺伝子群を発現させたシロイヌナズナはシュウ酸を生成しただけでなく、シュウ酸カルシウムの結晶形成能も獲得していた。新たに結晶を蓄積した細胞を調べた結果、その細胞内構造は元々結晶を形成する植物の異形細胞で観察される構造と類似していることが明らかとなった。この発見によって、シュウ酸カルシウム結晶の形成機構を構成する基本的な要素は、シュウ酸カルシウム結晶を形成しない植物においても保存されていることが示唆された。
PCPギャラリー