「エピジェネティックなクロマチン修飾により支えられる植物の営み」
エピジェネティクスとは、「DNAの塩基配列に変化を起こすことなく、DNA複製・細胞分裂を経て伝達される遺伝子機能の変化」 と現在では定義されている (本特集号巻頭の Kinoshita and Jacobsen を参照)。今からちょうど70年前にイギリスの発生学者 Conrad H. Waddington により、『遺伝的な内的要因と環境等の外的要因の相互作用により生物の発生が決定される』、という先見的なエピジェネティクスの基礎的概念が提唱された。以来、植物における多くの研究は、植物のエピジェネティックな現象やその分子機構の理解にとどまらず、広く生物に普遍的な分子機構の解明にも大きく貢献している。これらの研究においてたびたび議論になったことであるが、植物の発生プログラムの可塑性、変わりゆく環境への適応とその記憶にエピジェネティックな機構が多大な役割を果たしている可能性に関して、今やそれらを疑う余地はない。5月号のPCPでは、新進気鋭の研究者らが中心となって、この日進月歩の植物エピジェネティクス分野の総説や原著論文を特集している。是非本編もご一読頂きたい。
表紙のイメージは、今泉吉明氏 (CYCLOID Inc.) と金鍾明博士 (理研) により提供されたコンピューターグラフィクス (クロマチンで描かれたシロイヌナズナ) と Conrad H. Waddington の “epigenetic landscape” (The Strategy of the Genes, London: Ruskin House/George Allen & Unwin, 1957) by C. Dobbs を改変しデザインした。
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