植物を複雑な多細胞体として理解するためには単一細胞レベルでの遺伝子発現の解析が基盤となるが、そのためには個々の細胞における発現パターンを正確かつ高感度に測定できる技術が必要となる。今月号では、ルシフェラーゼレポータを用いた単一細胞発光イメージングシステムにより、単一細胞レベルでの遺伝子発現の測定を行った論文を掲載する。村中ら (pp.2085-2093) は、パーティクルボンバードメント法を用いて、ルシフェラーゼレポータ遺伝子をイボウキクサ (Lemna gibba) の細胞にまばらに導入し、高感度CCDカメラを用いて生物発光画像を連続的に撮影した。レポータ導入細胞由来の生物発光は細胞ごとに分離して定量できるため、単一細胞レベルでの遺伝子発現パターンの取得が可能となる。このイメージングシステムは、今までの主流であった個体レベルでの遺伝子発現解析では見ることのできなかった細胞レベルでの遺伝子発現挙動を解析するための強力な手法となる。
表紙の写真は、遺伝子導入されたイボウキクサの生物発光画像と明視野像を重ねた描画 (上部) と、概日リズムレポータであるAtCCA1::luc+ が導入された細胞の発光変動を1個体分まとめてプロットした描画 (下部) である。上部の写真において、白いスポットがレポータ導入細胞由来の生物発光である。
京都大学理学研究科 村中智明
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