植物の機械的ストレスに対する応答とそれに関連した植物の細胞壁マトリックス多糖の機能はよく理解されていない。これらの理解のための最初のステップとして、Verhertbruggenらは機械的ストレスの力に応答したペクチン性アラビナンの動態を調べた (p.1278-1288)。彼らはシロイヌナズナの花序茎を繰り返し刷毛で処理することで機械的ストレスを与えた。そして、アラビナン合成に関わると想定されている遺伝子の変異体arabinan-deficient、および5個以上のアラビノース残基が直鎖状になった構造をもつアラビナンを特異的に認識するモノクローナル抗体LM13を用いて、アラビナンの力学的性質を解析した。彼らの発見として、生長している器官でのアラビナンの不均一性が特筆される。また、細胞壁中や茎の発生期間において、アラビナンの沈着の精緻な制御が示唆されている。加えて、圧縮試験や貫入試験によって、ペクチン性アラビナンが細胞壁の粘弾性複合体に寄与していることが確かめられた。一方で、ペクチン性アラビナンが植物の機械的ストレスに対する応答に影響を及ぼすデータも示している。
表紙画像は、直鎖状アラビナン抗体LM1で抗体標識 (緑)、およびカルコフロー染色 (青)されたシロイヌナズナの茎の横断面。
Yves Verhertbruggen
(Leeds大・生物学部・植物科学センター、イギリス)
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