植物組織での細胞配置は個々の細胞の分裂面の選択によって決まる部分が大きい。植物細胞の分裂面選択を理解する上で重要な原理は、19世紀中葉以降、分裂に関する法則の発見の上に形作られてきた。ある法則によると、対称分裂時の分裂面の位置は新たに生じる隔壁の面積が最小になるように選択される傾向がある。つまり、分裂面選択の単一基準は隔壁面積であるというモデルに基づく説明が、もっともふさわしい事例となっている。このモデルを検証するために、Asadaは細胞形状を均一化した二つのタイプのタバコBY-2細胞の分裂を調べた (p.837-837)。一つは、プロトプラストから調整した偏球体型の細胞 (os細胞) であり、もう一つは、原形質分離を起こした細胞から調整した二重の細胞壁をもつ球−円柱型の細胞 (sc細胞) である。このsc細胞の分裂において、長軸方向の分裂が高頻度で起こることが示された。この結果は上記の単一基準説とは相容れない。細胞の形状は長軸に沿った細胞の長さの短軸に沿った長さに対する比 (形状決定比率 s ) で特徴づけられるが、この比率が2を越えるような形状でもsc細胞においては長軸方向の分裂が見られたことが、この研究の出発点となっている。一方で、同じような形状のos細胞では長軸方向の分裂は見られない。カバー写真は、calcofluor染色したsc細胞の分裂に由来する細胞対の、UV照射による蛍光を色反転した像 (上) と明視野観察像 (下)。このsc細胞の形状決定比率 s は2.4であるが、隔壁は長軸とほぼ平行に生じている。
Tetsuhiro Asada
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