植物は多種多様なファイトケミカル (植物性化学物質) を産生している。固着性生物としての植物にとって、これらの化学物質産生能をもつことは、生物由来あるいは非生物由来のストレスに対する防御のための戦略の一つと考えられている。食料、薬物、香料、化粧品、エネルギー、その他産業原材料など、人類は植物の物質産生機能に大きく依存している。
メタボロミクスと大量DNA配列解析という二つの技術的なブレークスルーによって、植物代謝の研究は、個別対象に関する従来の一元的なものから、数多くの代謝産物に関する機能や産生のメカニズム、さらにそれらの制御や進化にいたる多元的・網羅的な理解へと劇的に変貌することが可能となった。Plant and Cell Physiology誌の今月の特集号では、飛躍しつつあるファイトケミカルゲノミクスの分野の総説とオリジナル論文を掲載している。
カバー図の薬用植物 (学名。12時を起点に時計回り)
Coptis japonica, Papaver somniferum, Artemisia annua, Catharanthus roseus, Atropa belladonna, Ephedra sp., Taxus sp., Cannabis sativa, Panax ginseng, Glycyrrhiza uralensis, Ophiorrhiza pumila, Lithospermum erythrorhizon
ファイトケミカル名 (アルファベット順)
Artemisinin (アルテミニシン)、Avenacin A1 (アベナシンA1)、Berberine (ベルベリン)、β-carotene (ベータカロテン)、Camptothecin (カンプトテシン)、Dioscin (ジオスシン)、Glyceollin I (グリセオリンI)、Glycyrrhizin (グリチルリチン)、Hederagenin (ヘデラゲニン)、Matrine (マトリン)、Morphine (モルヒネ)、Nicotine (ニコチン)、Paclitaxel (パクリタキセル)、Shikonin (シコニン)
植物の写真提供は Hiroshi Sudo (星薬科大学)、Mareshige Kojoma (北海道医療大学)。化学構造の記述は Satoru Sawai (理研)。カバー図のデザインはEry O. Fukushima (大阪大)。
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