「側根」 の形成は、維管束植物の根系を発達させる上で重要な発生現象である。双子葉植物の側根形成は、根の内鞘組織に生じる側根創始細胞の非対称な分裂によって開始する。表紙右の6つの小さな写真は、シロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) の側根形成初期の側根創始細胞の様子を示す。まず、縦方向に接する2つの側根創始細胞の核が互いに近づく (上3つの写真:左から右へ)。これらの核が消えた後、2つの細胞が上下に分かれる非対称な分裂を起こし、4つの娘細胞となる (下3つの写真:左から右へ)。これらの細胞はさらに分裂を繰り返して側根原基となる。この過程は植物ホルモンのオーキシンによって制御されており、オーキシンシグナルの下流では植物に特有な転写因子LATERAL ORGAN BOUNDARIES-DOMAIN 16 (LBD16) などによって制御されることが知られている (右の6つの写真はLBD16と緑色蛍光タンパク質GFPとの融合タンパク質の局在を示す)。本特集号 “Plant meristems and organogenesis” のこの論文 (p.406-417) において、Okumuraらは、シロイヌナズナから側根形成能が顕著に低下するfewer roots (fwr) と名付けた新たな劣性変異体を単離し、この表現型が小胞輸送で働くArf-GEF (グアニンヌクレオチド交換因子) をコードするGNOM遺伝子のミスセンス変異によって起こることを明らかにした。fwr 変異体の根では側根形成開始に伴う局所的なオーキシン応答が正常に起こらず、側根形成頻度が低下する。一方、fwr 変異体の根では内生オーキシン (インドール-3-酢酸) 量が野生型よりも増える。これらの結果から、GNOMは根の局所的かつグルーバルなオーキシン分布の制御を介して側根形成開始に必要なオーキシン応答の確立に働くことが示唆された。左の2つの大きな写真は、側根を形成するシロイヌナズナ野生型 (左) と側根のないfwr 変異体 (右) の植物体 (10日目芽生え) を示す。
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