マメ科植物の根から浸出するフラボノイドは、バクテリアの根粒形成遺伝子 (Nod遺伝子) の発現を誘導し、それによりNodファクターの生成や分泌に関連するタンパク質が生産される。Nodファクターは逆にシグナルとして植物の根に作用して、様々な生理的応答を誘導し、感染糸の形成、根粒形成に必要な皮層細胞の分化を引き起こす。このようにて最終的に、根粒菌がバクテロイドとなり大気中の窒素を固定しアンモニアを生産する場としての根粒がつくられる。細胞骨格もまた根粒形成において、鍵となる働きをすると考えられている。特に、アクチン繊維の束化や断片化は感染の様々な段階で起きることが知られている。この号で、Zepeda ら (pp.580-592) は、低濃度の蛍光標識されたサイトカラシンD (Cyt-F1) を利用して、アクチンの重合が起きるプラス端を解析した。P. vulgaris における成長中の根毛細胞では、アクチン繊維のプラス端は極性分布し、それらは根毛細胞の先端部に観察された。この結果はアクチンの重合がNodファクター応答の初期過程に関わっていることを示唆している。
表紙の写真に見られる2つの膨張した根毛は、Cyt-F1とNodファクターで処理したP. vulgaris の同じ根に生じたものである。成長していない根毛細胞では、蛍光シグナルは限定的であり、アクチン繊維のプラス端が多く分布していないことを示している。もう一方は成長を再開した根毛細胞であり、その先端に顕著な蛍光シグナルの増加 (赤色部位) が見られることから、先端成長している根毛ではプラス端が極性分布することを示している。
Luis Cárdenas (Departamento de Biología Molecular de Plantas; Instituto de Biotecnología, Universidad Nacional Autónoma de México, Cuernavaca, Morelos México)
PCPギャラリー