大気中の二酸化炭素濃度の上昇が、C3植物の光合成を促進し、乾物生産および収量を増大させることは知られているが、その程度が温度条件や品種によってどのように異なるかについては、十分に理解されていない。今月号では、Adachi ら (PCP-2013-E-00431.R1/pcu005) が、開放系大気CO2増加 (FACE) 処理と水地温を 2℃ 高める加温処理を組み合わせた実験から、温暖化条件では、高CO2による光合成の促進程度が低下することを示した。また、Chen ら (PCP-2013-E-00573.R2/pcu009) は、別のFACE実験で高CO2に対する光合成の反応を品種間で比較した。標準的なジャポニカ品種のコシヒカリと多収性のインディカ品種のタカナリを現在のCO2濃度と高CO2濃度条件で栽培したところ、いずれのCO2条件でもタカナリの方が高い光合成速度を示した。このことから、タカナリは、高CO2濃度条件における生産性向上のために、有望な形質を持つことがわかった。
表紙の写真は、茨城県つくばみらい市におけるFACE実験の様子である。この施設では、均質な4枚の農家水田を利用し、それぞれの水田で、FACE と対照の外気CO2区を設置している。なお、外気CO2区は、FACE 区からのコンタミネーションを抑えるために、FACE 区から 75m 離れたところに配置されている (写真上)。FACE 区では、約 240m2 の八角形状の区画の周辺にCO2放出パイプを設置し、区画内のCO2が生育期間を通じて、常に対照CO2区よりも 200 µmol mol-1 高く保つように制御している。また、FACE 区の中には、品種、窒素施肥法などの様々な処理区が配置されている。中央左の写真は、それらの処理区が、塩ビ製の波板で仕切られている様子である。また、中央右および下の図は、FACE 区内のサブプロットによって、草型や葉色が大きく異なる様子を示す。
(独)農業環境技術研究所の林健太郎、長谷川利拡
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