花弁細胞のアイデンティティーを見分けるマーカー
アサガオ由来のInMYB1プロモーターは,幅広い双子葉植物において花弁特異的に作動する.東らは(pp. 580-587),InMYB1プロモーターの花弁特異的作動が,花序分裂組織におけるwhorlの位置情報を認識して起きるのか,それとも花弁的な器官・組織・細胞のアイデンティティーを認識して起きるのかを,シロイヌナズナのACBモデルに関わるホメオティック遺伝子の変異体および形質転換体を用いて検証した.InMYB1プロモーターは,AG-SRDX過剰発現体の花器官において異所的に発生した花弁でも作動した.一方,温度依存性ap3-1変異体において,InMYB1プロモーターはwhorl 2に発生した器官が花弁に近いほど強く作動し,がくに近くなると作動しなくなった.SEP3;AP3;PI;AP1過剰発現体では,がく片の一部の細胞が花弁的な表現型を示したが,InMYB1プロモーターはこの花弁的な細胞において作動した.以上より,InMYB1プロモーターは,whorlの位置情報を認識しているのではなく,花弁のアイデンティティーを細胞レベルで認識していることが明らかになり,InMYB1プロモーターが花弁のアイデンティティーを持つ細胞を見分けるマーカーとして有用であることが示された.
表紙は,野生型シロイヌナズナ,AG-SRDX過剰発現体,SEP3;AP3;PI;AP1過剰発現体の花と,InMYB1プロモーター由来のGUS染色である.
写真提供:東未来・白武勝裕 (名古屋大学)
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