トレニアにおける多様な花の創出
キメラリプレッサーは、非常に短い転写リプレッサードメインを転写因子のC末端に付加することで作製可能であり、様々な植物で花の形質改良のための効果的なツールとして広く利用されている。一方で、キメラリプレッサーは、全身で発現するカリフラワーモザイクウィルス(CaMV)由来の35Sプロモーターを利用した場合、花に限らず、その他の器官に不要な形質変化をもたらすことがある。佐々木らは、35Sプロモーターに加え、5種類の花器官特異的プロモーターを利用して(シロイヌナズナから1種類、トレニアからは4種類)、シロイヌナズナ由来のTCP3 (AtTCP3) キメラリプレッサーを発現させるコンストラクトを作製した。佐々木らは、AtTCP3キメラリプレッサーと花器官特異的プロモーターの組み合わせにより、花器官以外での不要な形質変化が回避されるのみならず、それぞれのプロモーターによって、花弁の色、形、配色パターンや細胞の形に異なる形質変化が引き起こされることを見出した(pp. 1319-1331)。この新奇的な分子生物学的アプローチにより、今後、多様な形質の花が作出される可能性が示された。
表紙は、性質の異なる6種類のプロモーターを利用したAtTCP3キメラリプレッサー組換えトレニアの花。6種類のプロモーターには、カリフラワーモザイクウィルス由来35Sプロモーター、シロイヌナズナ由来の花器官特異的プロモーター1種類、およびトレニア由来の花器官特異的プロモーター4種類が利用されている。背景には、野生型トレニアが示されている。
写真提供:佐々木克友(農研機構)、大坪憲弘(京都府立大)
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