オーキシンによる接ぎ木接着の分子メカニズムの一端を解明
接ぎ木の過程には穂木・台木間で細胞分裂を伴う強固な接着が起こり、オーキシンがこの細胞分裂を促進することが示唆されていた。しかしながら、接ぎ木接着におけるオーキシンの分子メカニズムは今までわかっていなかった。松岡ら(pp. 2620—2631)はシロイヌナズナの胚軸で接ぎ木を行い、共焦点顕微鏡による形態の観察と定量的な遺伝子発現の解析結果から、子葉由来のオーキシンが接ぎ木接着部位でANAC071とそのホモログのANAC096の発現を誘導することで、維管束の細胞分裂を促進し、穂木と台木間の強固な接着が行われることを明らかにした。また、接ぎ木部のオーキシンはジベレリンの生合成を誘導することで、皮層の細胞伸長を促進し、穂木と台木間の皮層組織における接着が行われることもわかった。以上の結果は、接ぎ木の癒着過程では組織ごとに異なる仕組みが存在することを示唆している。
表紙の写真は、シロイヌナズナの胚軸における接ぎ木部の共焦点顕微鏡像(左)と組織ごとに色分けした3Dモデル図(右)。帝京大学の松岡啓太博士の提供。
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