CRISPR/Cas9-generated CLE peptide mutants
高等多細胞植物を含む多細胞系は細胞同士がコミュニケーションをとり互いに調節しあうことで成立しており、低分子シグナリングペプチドはその一端を担っている。このようなメカニズムの重要性は広く認識されているにもかかわらず、シグナリングペプチドをコードする遺伝子の解析はあまり進んでいない。その原因の一つは、低分子シグナリングペプチドの多くが小型遺伝子にコードされていることであり、既存の突然変異体コレクションなどから機能欠失変異体を得ることが難しかった。この問題点を解決するため、山口ら(pp. 1848-1856)は、低分子シグナリングペプチドの一つであるCLEペプチドをコードする遺伝子を標的とするジーンターゲッティングベクターを設計し、シロイヌナズナに導入して変異体コレクションを作成した。このコレクションを用いることで、機能が明らかとなっていないCLEペプチドを対象とした研究を行うことが可能となった。また、この成果は、低分子シグナリングペプチド研究に対してCRISPR / Cas9による遺伝子ターゲッティングが効果的であることを示している。
表紙画像は、本文中に記載されているgRNAを用いて作成されたシロイヌナズナclavata3変異体(右)と野生型植物体(左)の写真である。画像提供は石田喬志氏(熊本大学)。
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