多くの植物種において、機能的に同一なマイクロRNAが複数のMIR遺伝子座から作られるが、このような遺伝的冗長性の意義は不明である。よく解析されているMIR165/6遺伝子ファミリーにおいても、シロイヌナズナのゲノムには9つの遺伝子が存在するが、それらのうち5つが根、葉、胚において非常に似通った発現パターンを示し、これらがPHABULOSA (PHB)をはじめとしたHD-ZIP III遺伝子の発現を限定化している。本号(pp. 1017–1026)において、橋本らは、これまであまり解析されてこなかった2つのMIR165/6遺伝子が発生中の胚珠において強く発現し、これらがPHBの発現を抑制することで、胚嚢を包む外珠皮の伸長を促進していることを報告している。この研究は、なぜ複数のMIR遺伝子が植物の発生に必要なのか、という問いに対する回答の手がかりを与えている。
表紙イメージは、MIR166遺伝子のGFP転写レポーターを発現する発生初期の胚珠の共焦点レーザー顕微鏡写真(奈良女子大の橋本佳世氏提供)。
PCPギャラリー