オキシリピンは様々な酸化脂肪酸群やその代謝物群の総称であり、植物やその他の生物種で幅広い役割を担っている。植物の主要なオキシリピンであるジャスモン酸は植物ホルモンとして重要な役割を持ち、成長過程や発生過程の多くに関わっている。他にも、昆虫や感染因子からの侵襲に対する応答など、植物と環境の相互作用を仲介する際にも働く。ジャスモン酸研究は最近の10年間でも加速しており、国際的な研究コミュニティーも拡大している。その1つの表れは、Alain Goossens氏とTed Farmer氏が中心となって2019年の4月にゲント大学VIBで開催された「Regulatory Oxylipins Meeting」である。本号では、そのミーティングの特集記事(pp. 2609–2612)を掲載してこの分野の最近の研究動向を報告した上で、5つの総説でジャスモン酸やオキシリピン類の関わる幅広い現象を紹介する。
表紙イメージは、シロイヌナズナのジャスモン酸生合成不全変異体であるaos変異体の花(左写真、独国ケルンのMax Planck Institute for Plant Breeding ResearchのIvan F. Acosta氏の提供)とアゲハチョウの昆虫(右写真、Yannig Van De Wouwer氏の提供)である。aos変異体のステージ14の花では、雄しべが短く、葯が裂開せず、花弁の過剰成長が見られる。
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