被子植物の重複受精では、雌性配偶細胞(卵細胞と中央細胞)のそれぞれが精細胞と融合するとすぐに精核融合が完了する。本号(pp. 29–40)において丸山らは、シロイヌナズナでは小胞体分子シャペロンHsp70であるBiP1とBiP2の2つが欠損すると、卵細胞と中央細胞の両方で核融合が欠損することを見いだした。共焦点顕微鏡を用いたタイムラプス観察によって、受精時の精核融合とそれに伴う精核のクロマチン脱凝縮が、胚乳形成に重要な役割をはたしており、その後の種子形成に必要であることが明らかとなった。
表紙イメージは、bip1 bip2二重変異をもつ雌性配偶体における核融合欠損を示す写真である。Histone H2B-tdTomatoで可視化したbip1 bip2二重変異の雌性配偶体の核をマゼンタで、Histone H3バリアントであるHTR10とCloverの融合タンパク質で可視化した野生株の精核を緑で示す。下側の緑色の輝点は、卵細胞核に近接する融合しなかった精核を示す。一方で、中央細胞では2つの極核が受精後も融合せずに存在し、それに近接して融合しなかった精核が観察される。写真は横浜市立大学の丸山大輔博士からの提供。
PCPギャラリー